好きなものを好きなだけ。
標題は、私が生きていく中で心に留めている1つの言葉です。
今ではもう8歳になる姪が、4年ほど前に口にしたことが印象深く残っています。
6人兄弟の大家族のうえ、昔から大飯食らいだった私は、
家計に少なからず打撃を与えていたに違いありません。
母がそんな私に幼いころから言っていたこと、
「元を取りなさい。」
「家で食べられないものを食べなさい。」
せっかくの外食なのだから、高いお金を払っているのだから、
遠慮なんてしなくていいんだよという、母なりの気遣いだったのかもしれません。
しかしながら子どもの時分からのその言葉は、
今ではすっかり貧乏性となって身についてしまいました。
肉よりも、魚よりも、
私は白いごはんが大好きでした。
それは現在も変わることなく続いています。
でも母は、お米なんて家でも食べられるでしょと、
それじゃすぐにお腹いっぱいになってしまうでしょと、
口々に言われたことを覚えています。
「食べ放題に来たときは、すぐにお米は食べてはいけない」
そんなハウスルールが形成されたのは言うまでもありません。
時を経てもそれは変わりませんでした。
実家に帰省し、久しぶりに家族で外食。
決して高級とは言えない焼肉食べ放題のお店。
きっかけさえも記憶の中では薄れていましたが、
家ではあまり食べられない牛肉を皿に盛り、
いつものように最初はお肉だけを食べるつもりでした。
ときたましか帰省せず、滅多に家族に会わない私でしたが、
幼い姪の成長に驚かされることばかりでした。
会うたび、話すたびに大人びて、語彙が増えていることも感じます。
イヤイヤ期にも入り始めたころだろうということも、言動から推察できました。
そんな姪は、母である私の姉と一緒に食材を取りに行き、
戻ってくると子ども用のアンパンマンの器にはてんこ盛りのウインナー。
果たして祖母にあたる私の母の反応はと見ると、
「またあなたはウインナーなんて持ってきて。」
と、やはり元を取りたい精神は変わっていない様子。
私も幼いころの体験を思い起こし、トングを片手に牛肉を焼こうとすると、
「好きなものを、好きなだけだよ。」
こんな言葉が聞こえました。
私は胸を打たれました。
子どもらしい、一見すれば浅はかな考えにも思われますが、
これがいかほど大切なことであるかということを知らされました。
決して今まで、母に反抗しようなどと思ったことはないのですが、
このときばかりは胸の内だけでなく私の首が大きく頷き、
きょとんとしている姪と強い握手を交わし、
そのまま席を立ったかと思えば、
次の瞬間にはしゃもじを片手にごはんをよそっていました。
好きなものを好きなだけ。
年を取れば取るほど、一筋縄ではいかなくなるものです。
好きなことだけをして、お金を稼いだり、
好きなことだけをして、生きていけるという人間はそういません。
どちらかといえば、私はそれを諦め、屈してきた人間です。
今までの人生で他者への配慮という名を借りた媚び諂いは覚えてきましたが、
せめて初めて認めるブログの中だけでは、
好きなものを好きなだけ、書き連ねてみようと思います。
どれほど続くのか、どれくらい書けるのか、
皆目見当もつきませんが、愉快に参りましょう。